理科 地学部 地学教育学会2日目:奈良地学巡検
2013.08.24
昨日のジュニアセッションから一夜明けた8月18日,せっかく近畿地方を訪れたこの機会に,フィールドでの地学をさらに学ぼうと,奈良県で地学巡検を行いました.内容は,木津川での紅柱石をはじめとした鉱物採集,奈良市北椿尾でのペグマタイト,奈良市都祁での柱状節理,火砕流堆積物,クロスラミナなどです.幸運なことに,火山地質学が専門の奈良教育大学の和田穣隆教授にフィールドを案内してもらうことができ,さらに充実した贅沢な野外巡検となりました.ご協力,ありがとうございました.
柱状節理の前で記念写真.
最初は,木津川の河原でレキを観察しながら,すぐ上流で産出する紅柱石などの鉱物を採集しました.
木津川でとれた紅柱石のベストサンプル.紅い柱状の鉱物であることがわかると思います.自然の中では,教科書的なものはそれほど多くなく,ふつう付加して変質してわからない赤色も残っているよいサンプルでした.授業でも見せたいと思います.
奈良市北椿尾でのペグマタイトの観察.ペグマタイトとは,大きな結晶からなる火成岩で,ここでは花こう岩の結晶がよく成長したものです.
よく鉱物の結晶が成長しており,銀色に光っているのは白雲母です.運動場でも手にくっつく小さなキラキラした鉱物ですが,ここのものはそれが大きく成長しています.太陽光のもとではキラキラときれいで,私も学生時代にここで出会い感動しました.同じような感動を生徒と共有でき懐かしいです.
幸運な生徒は,ペグマタイトの中にガーネットを発見しました.赤い鉱物がそうです.
奈良市都祁に移動して,柱状節理を観察しました.ここでは,谷を埋めるように流れたと考えられている火砕流堆積物(溶結凝灰岩)の柱状節理の柱状節理がみられました.
柱状節理の前で記念写真.
火砕流堆積物の露頭.近畿には火山がありませんが,ここには火砕流の痕跡があります.ここ以外にも多く見られ,この火砕流を出した昔の火山がどこにあったのか,解けていない謎です.
奈良市都祁のクロスラミナの露頭.教科書にもよく登場するクロスラミナ(斜交葉理)ですが,やっぱり実際のものを前にすると理解しやすく面白いですよね.
クロスラミナの拡大写真です.このような構造は,大昔,地層が堆積した当時の状況を残していて,この地層が堆積した過去の環境を知る,いわゆる化石のような役割をします.
*生徒感想
まず、奈良だけでもこんなに地学的におもしろい場所があることに驚きました。鉱物採集では花崗岩ペグマタイトを初めて見て、感動しました。そこでは柘榴石も採集できたのがとても印象に残っています。また柱状節理はあまり見たことがない角度から見たもので、さらには出来る場所によって形が異なることも新しく学べたのでよかったです。露頭での地層に関する説明は非常にわかりやすかったです。
現在火山があまりない近畿地方で火山噴出物に関する地層がみられ、それらを調べることで過去の火山活動について知ることができるというのはとても興味深い内容でした。さらにはそのようなことは実際に現場に行って見てみないとわからないことで、貴重な体験となりました。
地質にあまり精通していない私にとって、今回の鉱物採集は初めての体験ばかりでした。柘榴石や白雲母、谷地形から生まれた柱状節理など、未知との遭遇だらけでした。特に驚いたことは雲母や石英が、その量のあまり排水溝にも大量に落ちていることでした。これだけの鉱物を目の前にすると、どこから手をつけて良いのか分からなくなります。また近畿地方における火山活動のお話には大きく興味を引きつけられました。たった少しの露頭から、大昔の日本の歴史を理解できることに、この研究の面白さがあるのではと思います。和田先生の的確なハンマー捌きには開いた口がふさがらなかったです。今回学んだことは多くあります。今後も様々な場所に訪れて、地質の多様な理解をしていきたいです。また、お忙しい中案内をしてくださり、本当に感謝しています。またお会いして、地質の面白さについて教えていただきたいです。